1. 初診時の状況
2~3年前からかゆみが徐々に悪化し、お腹やお尻、前肢など舐められるところはすべて舐めてしまうため、エリザベスカラー(以下、カラー)が外せない状態でした。
以前、外用ステロイドを試したことがあるものの、症状があまり改善しなかったとのことで、当院にご来院されました。
初診時のお写真


- 症状: 前肢、下腹部からかかと付近まで広範囲に脱毛が見られました。お腹には赤いブツブツもみられます。
- この状態からも、猫ちゃんがかなり強いかゆみを抱えていることがわかります。猫ちゃんの舌はザラザラしているため、かゆみが強いとこのようにバリカンで刈ったような見た目で毛が抜けてしまうことがあります。
2. 治療方針
長期化している症状であるため、単なる対症療法ではなく、長期戦を視野に入れた治療計画を立てました。
初期治療の段階から ステロイド以外の副作用の低いお薬を組み込み、安定したかゆみや炎症の鎮静化を目標としました。
3. 治療の経過
🌟 治療開始1カ月後
かゆみはまだ残っていましたが、明らかに軽減しました。
皮膚の赤みやブツブツ(丘疹)が消え、早くも毛が生え始めているのがしっかり確認できました。


🌟 治療開始3カ月後
飼い主様がお薬の服用を根気強く続けてくださったおかげで、みるみるうちに毛が生えてきました。
症状が安定したため、カラーも徐々に外すことが可能になり、内服薬も1日1回から2日に1回へ減らすことができました。



🌟 治療開始6カ月後
毛の状態はほぼ元通りになりました。飼い主様と猫ちゃんが投薬を頑張ってくれた成果ですね。



今後は、さらにお薬の量を減らせるよう、以下のような体質改善に向けた取り組みも検討中です。
- 皮膚に良いフードの活用(アレルギー対応食、皮膚ケア用など)
- 腸活(サプリメントなど)により腸内フローラを整える
🤝 飼い主様と二人三脚で挑む皮膚治療
この約半年にわたる治療の成功は、他ならぬ飼い主様が諦めずに毎日ケアを続けてくださったおかげです。皮膚病の治療は長期戦になることが多いですが、このように根気強く取り組んでいただければ、目に見えて改善してくれるケースは決して少なくありません。
そして何より大切なのはこの猫ちゃんがかゆみのストレスから解放され、QOL(生活の質)が向上したことでしょう。
皮膚科の治療は私たち獣医師と飼い主様が、二人三脚で治療に取り組むことがとても重要です。
「もう治らないかも…」 「治療に疲れてしまった」 と諦めてしまう前に、どうぞお気軽にご相談ください。
一緒に最善の方法を探していきましょう!
